入学式。
俺は、県でも偏差値の高い高校に合格した。
中学の時から、とても良いとは言えない奴らとしかつるんで無かった。
飲酒だって、喫煙だってしてた。
いわゆるヤンキーってやつ。
そんな俺だけど、中三の夏から将来の事を考えるようになり、奴らとは関係を辞め、今の高校に入れるように猛勉強した。
そして見事合格。
中学ヤンキーだった俺だが、容姿はかろうじて残しておいた。
短髪で明るい茶髪、緑のカラコン。耳には数個かピアスを付けた。
入試の時から目立っていたけど、その時は既に「ヤンキーだ」と言われるようになっていた。
それは、やはり高校でも同じだ。
高校の敷地に入った途端ザワザワと根も葉もない噂ばかり。
なんでこんな高校に入ったんだろう、と正直後悔した。
でも。
「…あれ、生徒手帳がない」
そう気づいたのは校内の廊下。
校内のきまりやルールを確認しようと思って取り出そうとしたが、無いと気づいたのだ。
(どこかな…)
少し困っていると、後ろからか細い声で「あの…」と聞こえた。
(…ん?女?小さいな…)
振り向くと、俯いた小さい女がいた。
「…なに?」
正直言って、今まで関わってきた女は誰も、クソな奴ばっかりだった。
結局は自分の事しか考えてない奴ら。
だから、女と話すことすらウザかった。
告白とかなら、冷たくあしらおう。
そう思ってた。
「えっと…これ、落としましたよ…?」
小さい手に包まれたそれは、俺の生徒手帳だった。
「あ…俺の…」
「さっき、そこに落ちてましたっ」
耳まで真っ赤にさせていう女は、いつまでも下を向いている。
「ありがと。…な、顔見せて。下向いてばっかり」
何気なくいったつもりだったけど、彼女はお気に召したみたいで。
「…っ!ご、ごめんなさいっ…」
と、ぐっと顔を上げた。
その途端、俺は息を飲んだ。
「…!」
美少女、と言ってぴったりなその子は目を泳がせて怯えている。
「あ、あの…私、これで失礼しますっ…」
そしてくるっと背を向けた。
「っ、待って」
そ俺はその子の小さな手を、何故か反射的に繋いでいた。
「え…と…」
こんなに慌てたのは初めてだ。
…でも、何故だろう。
彼女の背中を見てたらすぐ、寂しくなった。
なんだか、この子の笑顔を見てみたいなって思った。
…多分、恋をしたんだ。
なぜだか分からないけど、この子をもっと知りたいと思った。
目の前の彼女は、きょとんとした顔で俺を見上げる。
そして、俺は無意識にこう言っていた。
「連絡先…教えて」