「津奈木仁奈さん!僕、同じクラスの田中なんだけど!好きです!付き合って下さい!」
「ごめんね、彼氏がいるの」
「いやいや、そんな事言わずに〜」
「だから無理だって」
こんなにしつこいなんて!!!
今までにいないタイプ〜苦手だな…
「でも仁奈さん、僕のこといつも見てたよね?」
いや、多分それ、あなたの後ろの席の裕人くんだと思いますけど…。
「勘違い!ごめんなさい!」
私は田中くんに背を向け、歩きだそうとして立ち止まった。
…それは、田中くんに腕を掴まれたから…だけど。
「…離してよ」
「やだ」
「押し付けがましいのよ!私に彼氏がいるって分かってるでしょ!?」
息を切らしてそう叫ぶ私を、蔑んだように見る田中くん。
「君がなんと言おうと、僕は諦めない。君は僕のものだよ」
そう言って、私は肩をつかまれた。
「ね、チューしよ、いいよね、ね?」
顔がどんどん近づいてくる。
(やだっ、気持ち悪い……!!)
その途端、掴まれていた手が離れた。
「おい、軽々しく触れてんじゃねーよ。そいつ俺のだから」
ぐっと腕を掴まれ、引き寄せられる。
「裕人くん……」
「行くぞ」
「まっ、待てぇ!仁奈ちゃぁん、ちょっと…」
「おいクズ、もう二度と仁奈に関わるんじゃねぇ。でないとそのご自慢の顎へし折るぞ」
あ…
確かに、田中くんの顎はご立派にしゃくれて……って!
「さすがにそれは言いすぎじゃ…」
「いんだよ。こいつ結構こたえてるし」
田中くんの方を見ると、彼はふるふると震えていた。
「仁奈、手」
きょとんとした私を見計らったように裕人くんはくすっと笑って私の手を握った。
「裕人くん…」
あー、やっぱり、裕人くんて優しいなぁ!
そんな私は気づいてなかった。
「仁奈は可愛いから、危ねーんだよ…すげー不用心だし…」
裕人くんがそう言っていたことに。