「にーなっ!」

「あっ、なんだぁ未央かぁ」

「えぇっ、なんだぁはないでしょぉ!」

「あはっ、ごめんごめん」

「もーっ。」

ぷーっと頬を膨らませる彼女は橋田未央(ハシダミオ)。私の幼なじみで親友。
頭の上で高く上げたポニーテールは彼女のトレードマークとも言える。しっかりしててお姉さんみたいな未央になら、何だって話せるんだ。

「…そういえばさ、仁奈と坂下、付き合って一年経つんだっけか?」

ポッキーを食べながら未央はそういった。

「そうなのっ!」

「はぁ〜。ほんと、あんた達はラブラブだよねぇ。見てて呆れるほどに」

ため息をつく未央。

「何言ってんの!大変なんだよ〜?裕人くんモテるから、浮気とか…しないかなって…」

私がうつむきがちに話すと、未央は「あ…仁奈、後ろ…」と戸惑いがちにいった。

「ん〜?…って、裕人くんっ!!」

後ろには、怒った顔の裕人くんが……
ん?怒った顔…って…

「仁奈……お前、俺が浮気なんてするわけ……」

「わあっ、ごめんなさぁーいっ!!」

私は慌てて席を立った。

「にぃなぁーっ」

怖すぎて、涙出てきたッ。

もーー、裕人くん顔怖すぎる…せっかくのイケメンがぁ…

ぎゅっと目をつぶった、その時。

ーーふわっ。
柔軟剤のいい香りがして、私は誰かの腕の中に包み込まれた。

(この匂い…)

「…なに泣いてんだ、アホ」

「ひっ、裕人くん」

上を向くと、さっきより表情の和らいだ彼がいた。

「お前が泣くと不安になんだよ。まぁでも、浮気を疑わせた俺にも責任あるけどな」

裕人くんはそう言って悲しげな顔をした。

「そんなっ…裕人くんのせいじゃないよっ!浮気って言った私が悪いの!」

彼をぎゅっと抱きしめる。
すると、頭上から「ふっ」と笑い声が聞こえた。

「当然だ。そうそうお前が悪いんだよ。」

「…えっ?」

一瞬、耳を疑った。

「だーかーら、俺は悪くないっつってんの」

「なにそれ!ひっど……ーーんっ!」

ふいに唇を塞がれた。
しかも、教室で!クラスのみんなのいる前で!
中には「ヒューヒュー」と言ってる人も「見せつけがまし〜」と妬んでいる人も。
「ーぷはっ!裕人くんなにして…っ」

「見せつけよーぜ」

と、首すじにちゅっとリップ音を立てて裕人くんはキスをした。

「印。俺のもんだっていう」

べーっと舌を出してにやにやと意地悪な顔で笑う裕人くん。
「もーーっ、バカぁ!」

裕人くんを押しのけ、未央の元へ行く。

「なによぉ仁奈。嫌がってた割には顔真っ赤だよ〜?」

「ちっ違うもんっ」

そうぷいっと顔を背けたけど、手を頬にやると凄く熱い。

「まぁ、こんな可愛いと見せつけたくもなるよねぇ〜♪」

そうにこにこと話す未央に「?」と思ったけれど、この際いいとして。


まぁ何だかんだいって、裕人くんは意地悪ながらも私を愛してくれます♡



やっぱり、好きだなあ。

だぁいすき♡