(ガラガラガラ)

誰かが扉を開け、病室に入って来た。

そこには瀧くんが私の大好きな向日葵の花を持って、お見舞いに来てくれていた。

私の見間違いか、瀧くんは私を見て一瞬くらい顔をした。

でもすぐ、いつもののクシャッとさせた笑顔の瀧くんになった。
私の大好きな顔。
いつも隣で見ていたい顔。

『翠琴が急に入院するって聞いて驚いたよ〜!!』

安心した、いつもの瀧くんだ。
やっぱり私の見間違いだったのかな。

『ごめんね…。』

『なんで翠琴が謝んだよ』

『そうだよね!!私何もしてないんだから謝る必要ないね!!あはははは』

言えなかった。
私、もうすぐいなくなるかもしれないって。
余命宣告されたんだよって。

私、今うまく笑えているかな…。
いつもの私でいられているかな…。

苦しい。
心臓が抉られるかのように痛い。
あ…これが心なんだ…。

いつの間にか私の頬には涙が伝っていた。

『翠琴…??どうした??』

『…もっと…生きたい。私…生きたい。』

『翠琴は生きてるよ??今も、この先も。ずっと…ず〜っと』

『グスッ…ヒック…違うの…私ね、もうすぐ死ぬの。もう…生きられないの。心臓移植手術をすれば生きられるかもしれないって。でも、ドナーを見つけるのは難しいって…。』

ごめんね…。
瀧くん…。
私…瀧くんが思ってるよりも強くない…。
1人で戦うことも出来ないよ…。
臆病で弱虫だから…。

『大丈夫。きっと見つかるよ。翠琴の心臓…きっと見つかるから…。』

そういうと瀧くんが私の髪をクシャッとさせた。

『え…??』

予想外の返答に私は涙を拭って、瀧くんの顔を見た。

その時の瀧くんの顔はいつもと変わらない私の大好きな瀧くんで、私を安心させるかのようでした。