彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)




「まぁ・・・2拍3日でお風呂に入る機会はあと1回だけ・・・・・明日も体調がすぐれないって言うか、チャンバラで疲れて寝ちゃったふりして、こっそり入ればいいよね~」





そう思いながら、旅館のパンフレットを見る。

瑞希お兄ちゃんがこの旅行が決まった時にくれたもの。

時間つぶしにちょうどいいかと思って、パラパラとページをめくる。





「わぁ~すごいなぁ~ここの温泉・・・!」





ダメだとわかっているけど、好奇心をかられるお風呂の種類。





「いやいや、今日はシャワー浴びちゃったから、我慢しよう!!」





そう自分に言い聞かせて立ち上がる。

和を基調とした部屋のテラスは、見事な庭園が見渡せる場所。

部屋の冷蔵庫から出したお茶を持って、外に置かれた椅子に腰かける。





「風流だわ~・・・・」





優雅な気持ちでお茶を飲む。

午後から天気が崩れたせいか、今夜はそれほど熱くない。

部屋のクーラーを切って、網戸にする。

それで涼しくて心地よい風が頬をなでる。

目を閉じれば、より強く感じられた。

同時に、今日1日のことが脳裏をかける。





「もったいなかったなぁ~キス・・・・・」






(瑞希お兄ちゃんが、人工呼吸してくれたって言うのに・・・・)






「覚えてないなんて・・・。」






唇を指でなぞる。

その感触は覚えてないけど、思い出の中にはある。






(酔っぱらってチューされた時と、私からした時と・・・・)




これで3回目。






(本物のキスは・・・お互いを思いあっての口づけは、いつできるんだろう・・・?)






そんな思いで目を閉じたまま、ため息をつく。

しばし、外から響く鈴虫の声に耳をかたむけたのだった。