「まぁ・・・2拍3日でお風呂に入る機会はあと1回だけ・・・・・明日も体調がすぐれないって言うか、チャンバラで疲れて寝ちゃったふりして、こっそり入ればいいよね~」
そう思いながら、旅館のパンフレットを見る。
瑞希お兄ちゃんがこの旅行が決まった時にくれたもの。
時間つぶしにちょうどいいかと思って、パラパラとページをめくる。
「わぁ~すごいなぁ~ここの温泉・・・!」
ダメだとわかっているけど、好奇心をかられるお風呂の種類。
「いやいや、今日はシャワー浴びちゃったから、我慢しよう!!」
そう自分に言い聞かせて立ち上がる。
和を基調とした部屋のテラスは、見事な庭園が見渡せる場所。
部屋の冷蔵庫から出したお茶を持って、外に置かれた椅子に腰かける。
「風流だわ~・・・・」
優雅な気持ちでお茶を飲む。
午後から天気が崩れたせいか、今夜はそれほど熱くない。
部屋のクーラーを切って、網戸にする。
それで涼しくて心地よい風が頬をなでる。
目を閉じれば、より強く感じられた。
同時に、今日1日のことが脳裏をかける。
「もったいなかったなぁ~キス・・・・・」
(瑞希お兄ちゃんが、人工呼吸してくれたって言うのに・・・・)
「覚えてないなんて・・・。」
唇を指でなぞる。
その感触は覚えてないけど、思い出の中にはある。
(酔っぱらってチューされた時と、私からした時と・・・・)
これで3回目。
(本物のキスは・・・お互いを思いあっての口づけは、いつできるんだろう・・・?)
そんな思いで目を閉じたまま、ため息をつく。
しばし、外から響く鈴虫の声に耳をかたむけたのだった。


