「凛・・・そんなにお父さんとお母さんが嫌か?」
「言いなりにならないと、不機嫌になるのが嫌です。」
「はあ~伊織の分析通り、『子供は自分の所有物タイプ』だな。」
「え?分析??」
「いや、こっちの話だ。俺、凛に好かれてるって思っていいよな?」
「こちらこそ!瑞希お兄ちゃん・・・・僕を好きで・・・・いてくれますか?」
「ああ、好きだ。大好きだ。」
「僕も大好きです!」
そう答えたら、うりゃうりゃあ~とほっぺを撫でまわされる。
「あはは!くすぐったい!」
「お前、プ二プ二してるなぁ~ホント、子供のほっぺだ。」
「からかわないでくださいよ~」
「褒めんてんだ。」
そのまま抱きしめられ、私も彼の背中に手を回して抱き付く。
ゲラゲラと二人で笑う。
ミンミンと大声でなく、セミに対抗するように。
「俺はアキナを敵だと思いたくない。」
一瞬、セミの音が止まった気がした。
「アキナを敵だと思ったら、陽翔も敵に回すことになる。」
私の笑う声が止まったのは間違いない。
「あれが・・・あれでアキナが・・・凛をあきらめてくれればいいと・・・ご都合主義で思ってる・・・・」
「瑞希お兄ちゃん・・・」
「俺の方だけに敵意を向けてくれていれば・・・・」
「それは違いますよ。」
ミーン、ミーン・・・
消えていたセミの声が戻る。
いいえ、我に返ると言っていい。
「彼女はあれで正常なんです。」
「・・・・・・は?」
私の言葉に、瑞希お兄ちゃんが私の顔を見る。
きっと、私もこんな顔で涼子ちゃんを見ていたんだろうな・・・と思った。
今なら、涼子ちゃんが言った言葉の意味を、自分なりに理解できた。


