「凛は、龍星軍を引き継いでくれた。しつこいストーカーを追い払ってくれた。夜店の手伝いをしてくれてる。」
「でも、それはたいしたことでは~」
「誰にでもできることじゃねぇよ。俺がバリスタの道に進めるように、凛はその手助けをしてくれてる。今だって・・・・・・俺のこと、はげましてくれてるだろう?」
「お兄ちゃん・・・」
「だからよ、自信持ってくれ。俺も・・・・・・・弟は凛だけだ。」
「え!?それだと烈司さんは~」
「双子だからいいんだよ!分身だ、分身!」
「そっちの方が良いです!」
「はあ!?注文が多いぞ、愚弟!?」
「弟はわがままなものです!」
「俺の弟は凛だけなんだから、それでいいだろう!?」
「そーですけど~~~」
「不満かよ!?・・・・ブラコン1番は?」
「・・・・・・・本当に1番ですか?」
「1番だ。生きてる・・・・弟の中では、1番だよ。」
そう言った表情にドキッとする。
はかなげで、切なそうだけど、優しい笑顔。
だけど、その口が吐く言葉は、甘くて残酷。
「陽翔はあくまで後輩だった。後輩の中では1番可愛い弟分・・・死んじまった中では、な。だから凛は、生きてる奴の中で・・・1番の弟だ。」
「・・・・それ、ズルくないですか?」
けっきょく、どっちにも良い顔してる。
「ズルいぞ。」
ニヤリと笑うと、耳元でささやかれた。
「面と向かって言うのは、凛が初めてだ。陽翔にはいってない。言うことさえなかった・・・」
「え?」
「俺が陽翔を忘れないのは、俺自身に罪があるからってだけじゃない。あいつを忘れちまったら、俺自身を否定することになる・・・。覚えていることで、これから死ぬまで・・・供養を続けたい。もしも、あの世であいつに会った時に・・・・」
「許してもらえるようにですか・・・?」
「怒ってくれるように。」
「・・・ばかですよ・・・」
お兄ちゃんは、ばかだ。
伊吹陽翔もバカ。
九條アキナも馬鹿。
ばか、ばか、ばか。
みんなばか。


