彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)






「み、瑞希お兄ちゃん!?なにをー?」

「ほらな?」





車の外に出て、彼に手を引かれ、助手席を通り過ぎようとした時だった。

そこに座っている人に、そう言われたのは。




「すぐ戻ってくるって言っただろう?」

「烈司さん・・・・」

「うるせぇ!!」




クスと笑う色男に、正面を向いたままの瑞希お兄ちゃんが怒鳴る。

それに合わせて、私の腕をつかむ力がグッと強くなる。





ミーン、ミーン、ミンミーン。



(あつい・・・・)





あついのは、照りつける夏の日差しのせいだけじゃない。

私をこがすのは、ただ1人の男だけ。

引っ張られ、そのまま石の階段へと進む。

無言で従っていれば、私を見ることなく彼は言った。





「俺を許さないでくれ、凛。」

「え?」





石段に足を置いた時、ハッキリと言われた。





「アキナが凛を狙ったのは、俺への復讐のためだ。」

「復讐・・・・」



ミンミンミーン。





セミの声がうるさい。

大事な話が始まりそうなの。

お願い、静かにして。





「九條アキナは、陽翔と同じ年の女の子で、同じ東山高校の後輩なんだ。」

「え!?じゃあ、瑞希お兄ちゃんの後輩でもあり、カンナさん達から見れば先輩なんですか?」

「ああ。陽翔は・・・俺の追っかけみたいなことをやってて・・・高校も、俺がいるから東山高校を選んだ。アキナとは、女のダチを通して知り合って、それで・・・」

「そうなんですか・・・」

気になる・・・・

「伊吹陽翔さんは、どういった経緯で亡くなったんですか?」

「痛いところから聞くな?」

「あ・・・」





そう言ったら、私をつかむ腕の力がゆるくなる。

離されるかと思ったら、力の加減が変わっただけだった。





「陽翔の死は―――――話したら、一言で終わるようなどこにでもある話だよ。だけど―――」





再び強くつかまれた時、その答えは返ってくる。






「まだ・・・俺の口から凛には言えない。」

「・・・はい。」






彼の言葉で理解する。





(それだけ、心の傷が深いの・・・?)





伊吹陽翔さんを失ったショックが大きいの?

だから話せないのだと言うの?





(全国ナンバーワンの最強暴走族の総長と言われた真田瑞希に、それほどの深手を負わせた出来事だったというの?)





戸惑う私をよそに、瑞希お兄ちゃんの話は続く。