「っわああああああ!?ひ、ひいた!?ひきましたか!?」
「伊織じゃなけりゃ、ひいてたな。大丈夫だ、凛たん。」
「ホントに!?マジで引いてないでしょうね、イオリン!?」
「落ち着け、モニカ!そういう衝撃はなかっただろう?」
「わはは!瑞希の言う通り、血のにおいも骨がきしむ音もしなかったぜ~!危なかったな、加害者~!?」
「馬鹿者!今のは100%俺が被害者だぞ!?」
「凛は平気か?」
「は、はい・・・瑞希お兄ちゃん・・・」
車内はパニックになるが、冷静な人達のおかげで助かる。
「モニカ、凛を頼む。」
「え?」
そう言うと、私をモニカちゃんに押し付けて車の窓を開ける瑞希お兄ちゃん。
そして、声高らかに叫んだ。
「どういうつもりっすか!?あんたの部下してると、車の前に飛び出したくなるような精神状態になるんですかねー!?」
窓から顔を出しながら瑞希お兄ちゃんは言った。
「フジバラさーん?」
「おじさん!?」
パトカーから、くわえたばこのおじさんと、見たことあるような、ないような男の人がおりてくる。
「おじさん、今の見たよね!?」
「あ、コラ!凛!」
「今、飛び出した人が悪いよね、おじさん!?」
瑞希お兄ちゃんが開けた窓に、同じように顔を出しながら聞けば――――――
「おじさんじゃない!フジバラ警部補と言え、凛道蓮!」
「え!?あ・・・お兄さんは!?」
「岩倉だ!」
そう言って車の前から出てきたのは、車の前に飛び出した人。
「お兄さん、飛び出しを注意する側が、飛び出しちゃダメでしょう?」
「お前らが無視するから、引き止めただけだ!」
「無視??」
「言いがかりだ。」
その言葉で、助手席の窓が開く。
「飛び出してきたのは、あんただろう?昔懐かしの『101回目のプロポーズ』かと思ったぜ?」
「ああ、知ってるぞ。車の前に飛び出して、あなたのためなら死ねるって言ってプロポーズするやつか?」
「そんなアプローチ嫌ですよ!」
「あら、昔はあったのよぉ~凛ちゃん?」
「わははは!あれで、引っかかる女が多かったらしいぜ!」
「くだらん!今するべき話は、恋愛ではなく交通ルールについてだろう!?」
そう言うなり、烈司さんが開けた窓に向かって獅子島さんが叫ぶ。


