「ははは!伊織、優秀な演技のし過ぎと、連日の教授のお供で忙しいだけだよ、凛たん。」
「ええ!?教授のお供!?すごいですね、優秀ですね!?」
「ふん!当然だ。」
「とかいいつつ、凛たんに褒められ、本心はめっちゃテンション上がってますよ~みなさーん♪」
「黙らんか、烈司!」
「わはははは!誤魔化すな!バレバレだぞ!?」
「そーねぇ~凛ちゃんに尊敬されるのが嬉しいのよねぇ~?」
「顔に出てるぞ~?あーあ、伊織にも凛ぐれー素直さがあれば・・・」
(え?違いがわからない・・・)
口調の強弱はわかるけど、表情はポーカーフェイスのままで変わらない眼鏡の先輩。
その変化がわからず、1人、話題に入れず、取り残される気持ち。
なので、瑞希お兄ちゃんのシャツの端をつまんでみた。
「!?」
それに気づいた瑞希お兄ちゃんがこちらを見るけど―――――――
ナデナデ。
「!!?」
怒らなかった。
代わりに、シャツを握る私の手を、優しくなでてくれた。
(きゃああああああああああ~~~~~~~~~!)
拒まれなかった!
ラッキー!!
えへへ♪な思いで、もう少しだけと、ギューと力を込めてにぎった時だった。
「あーあー、マイクテスト。ただいま、検問発生が発生しました。」
「烈司さん!?」
突然、水着のお姉さんが表紙の雑誌を丸めたかと思うと、それをマイクに見立て、口元にあててしゃべる男前。
「どうした、烈司?」
「検問って・・・?」
「瑞希、凛たん。おじさんが出るぞ。」
「「え?」」
「いやん!おじさんて・・・ちょっと~・・・」
「奴しかおらんな。」
「わははははは!」
私が知る『おじさん』といえば、だいたい1人しかいない。


