「ごめん、涼子ちゃん。お兄ちゃんからだ。」

「え?なんて・・・?」

「用意出来たら、帰って来いって。悪いけど、もう行くね。」

「そう・・・・気にしないで。気をつけてね。」

「ごめんね。携帯、早く返した方が良いと思って、朝のファミレスに呼び出しちゃったのに・・・・迎えも見送りもできなくて。涼子ちゃんを送って行けなくて本当にごめんね。」

「平気だよ、凛君。それぐらい気にしないでよ。」

「でも、今日も夏期講習だよね?こんな朝早くから出かけたら・・・親御さん、怒ってなかった?」

「そんなことないよ。お母さん達には、夏期講習前にファミレスで勉強して行くって言ってるから。」

「無理させちゃったね・・・ありがとう。」

「私こそ・・・・『小林涼子』を守ってくれてありがとう。」



携帯を振りながら言う涼子ちゃんにホッとする。





「今度はゆっくり話そうね。」

「うん、楽しみにしてる。」





そう言いかわして、席を立とうとしたのだが・・・





「―――――――凛君・・・・!」

「え?」





涼子ちゃんに呼び止められる。

それも、腕をつかまれ、文字通り引き止められた。





「どうしたの?あ、お会計なら僕が出すから――――――」

「違う。」

「え?」

「そういうことじゃない、です。」

「涼子ちゃん?」





レンズ越しの彼女の目が険しくなる。

何かをため込むような表情。




「・・・どうしたの?」




手をつかまれたまま、彼女の隣へと移動する。

横に座れば、ビクッ!とされたが、涼子ちゃんは私を見ながら言った。





「アキナさんの話だけど・・・・」

「アキナ?ああ・・・・2代目の女のこと・・・かな?」

「そう。」





巻き込んでしまったこともあって、涼子ちゃんには事情を話していた。

焼き殺されかけたところは、かなりはぶいて話したけど、それでも心配された。