「念のため、レントゲンも撮らせてもらったよ。ずいぶん高いところから落ちたのに、ヒビが入ってなかったのは・・・よほど受け身がよかったのか、あるいは『厚着』をしていたおかげなのか。」

「・・・・!?」



その言葉で、急いで胸をまさぐる。





(違う!!)





アンダーシャツは着ているが、胸にまかれているサラシは違っていた。




(私が使ってる物とは違う・・・・!?)




「さらし、生地の目があらかったから、やわらかいのを巻きなおしておいたよ。蓮君。」

「見たんですか!!?」





淡々としゃべる先生に問いただす。





「俺の・・・体を見たのか!?」

「見た。」





即答され、目の前が真っ暗になる。





「あまり胸を抑えるのはやめた方が良い。形が崩れるからね。」

ムネヲ、オサエルノハ、ヤメタホウガイイ。





「なによりも、気管を圧迫する恐れが―――――」

「黙れっ!!」

「凛!!」





反射的に、老人に飛びかかっていた。




「あかん!凛!」

「放せ、ヤマト!!」




それを後ろから、羽交い絞めにして止めるヤマト。





「何で邪魔する!?こいつ、このジジイは俺の体を見た!!俺の、僕の、私のこと―――――――――」

「うん。」





私を見ながらうなずくと、はずした医療用手袋をゴミ箱に捨てながら医者は言った。





「見たよ。患者の体を知ることは医者の義務だ。」





それで泣きたくなった。

この人に知られたということは―――――――





「言わないで!!」





瑞希お兄ちゃんに知られるということ。





「言わないでください、シゲ先生!!」

「『言わないで』、とは?」

「僕は、僕は!私は―――――――・・・・あの人に嫌われたくない!彼に、瑞希お兄ちゃんに見捨てられたら、もう場所がない!!」

「凛!せやからな~」

「瑞希お兄ちゃんをだましてるのは、悪いってわかってます!治療費も・・・即金は無理ですが、毎月分割でお支払いして返済します!だから――――――――まだ・・・・!」





言わないで。





「自分の口から言うまで、好きな人に、瑞希お兄ちゃんに、『本当の凛』のことを言わないでください!!」





悲痛な気持ちで訴える。

頭のどこかでは、わかっていた。

ケンカをすれば怪我をする。

刃物を持ちだしてくる奴らばかり相手にしてきて、今まで無傷だった方が、医者に診せるようなけがにならなかった方がおかしい。





(私がしてることはおかしい。)





わかっている。

わかっているけど―――――