「全国紙、地方紙、ネットも探ったが・・・・出てなかった。」

「!?そーかよ・・・」





途端に、瑞希お兄ちゃんの顔から笑顔が消える。





「瑞希お兄ちゃん?どうしたんですか?」

「ああ・・・・昨日の件が、ニュースになってなかったってだけだ・・・」

「・・・お兄ちゃん?」






そう語る顔は、どこか無理をしている風に見えた。

前にも、こんな表情を見たことがある気がしたけど・・・・





「そんで、諜報部?軒猿の正体は、わかったか?」

「伊織様と言え、初代総長殿?時間の問題だ。」

「今は、まだわかってないか・・・」

「『しぼりこむ』さじ加減が難しいだけだ。」

「今回はイオリンだけじゃなくて、れーちゃん使いましょうよ。」

「わははははは!一発でわかるよな~!!」

「・・・そーだな。」






仲間の声に、こちらもいつもとは違う雰囲気で答える烈司さん。





「あの・・・大丈夫ですか、烈司さん?」

「心配いらないよ、凛たん。可愛い4代目の頼みなら、烈司さんはどんなことでも頑張れちゃうから。」

「そうじゃないです!その・・・体に負担がかかるなら、無理しないでほしいんです・・・!」

「!?・・・・だいじょーぶ♪」





その言葉に合わせ、頭に手を置かれる。





「俺の心配はいいから、自分のことだけ考えてろ。瑞希も・・・あんまり考えるなよ?」





そう言って反対の手が、瑞希お兄ちゃんの頭をなでる。





(あ・・・・)

「・・・そーかよ・・・」





烈司さんの動作を受けてうつむき、視線を逸らすお姿が可愛い!!





(わーわー!こういう反応初めて見たかも新鮮!可愛い!キュート!プリティだけど~~~♪)



でも、なぜだろう。





(・・・・・・・悲しそうにも見えるのは・・・・・?)

「瑞希お兄ちゃん、どうし・・・・!」

「わはははは!とりあえず、飯にしようぜ!」

「そうね~安心したらお腹すいちゃった~」

「うはははは!どんなご飯が出っかな~♪」

「コメはもちろん、食材もすべて国産品を使用した安全な食事だ。」

「味も抜群だぜ?」

「最高でんなぁ~♪」



(あ・・・・)





私の声が外野にかき消される。





「行こう、凛。腹減ってるだろう?」

「う、うん・・・」





なによりも、聞こうとした本人からそう言われたこともあって、質問をあきらめて部屋を出る。

女将さんが用意してくれた特別室での朝食。





(気のせいだったかな・・・?)





その時の私は、そう思ってしまった

だから思いもしなかった。

この時、瑞希お兄ちゃんに聞かなかったことを、のちに後悔することになるなんて。