「では、オーダーの確認をするでござる。伊賀流忍者茶そばセット、デザート付きをご注文のお客様はどちらでござる?」
「あ、彼女です。」
男性スタッフの言葉に答える。
それで、緑色のお蕎麦と、つゆと、てんぷらの盛り合わせと、デザートである色抹茶アイスがのったお盆が涼子ちゃんの前に置かれる。
「僕のおごりですから、遠慮しないで召し上がれ、お姫様?」
「あ、ありがとう、凛君。」
優しく言えば、軽く会釈しながらお礼を言う涼子ちゃん。
そこへ再び声がかかる。
「では、こちらがお客様の伊賀流忍者のお抹茶セットでござる。」
「あ、凛君のだね!」
(ん?)
抹茶のアイスとぜんざいが一緒になったデザートが私の前に置かれる。
それを見て、涼子ちゃんが楽しそうに言ってくれたけど。
「伊賀流?」
あなたは言うことがこまかいと言われるお母さんの言葉通り、余計な一言を言ってしまう。
いつもなら言わないことなのに、なぜか、その日に限っては言ってしまった。
「僕が頼んだのは、『伊賀流忍者』ではなく、『甲賀流忍者』のお抹茶セットですが?」
そう告げた瞬間。
「几帳面でござるな?」
忍者姿のスタッフが笑った。
その目が笑う。
小さい間違いを指摘され、誤魔化すための愛想笑いじゃない。
同時に、その手に光る何かを見る。
周囲へ隠すように、私達へと向けられる。
(ヤバい!?)
反射的にそう思い、テーブルの裏をつかむ。
「凛君?」
ガッシャーン!!
カッ!カッ!カッ!
「きゃああああああああああ!?」
グラスやお椀の割れる音と、涼子ちゃんの悲鳴が店内に響く。
机をひっくり返した私は、急いで涼子ちゃんを私の方へと引き寄せる。
「り、凛君、いきなり何!?」
「僕の後ろへ隠れて、涼子ちゃん!」
ひっくり返したテーブルの表面を見る。
ちゃぶ台を盾にした時、掌に伝わった振動。
(――――――――――あれはただ事じゃない!!)
素早く確認する。
パフェとお抹茶セットが乗っていた場所に何か刺さっている。
それがなにか、鈍い私でもわかった。
「手裏剣!?」
「卍手裏剣だ。」
感心するような声が聞こえた。
「反射神経が良いねぇ~」
「き、君は!?」
「店員さん!?」
私達に食べ物を運んできたスタッフだった。


