(帰ろう。)
知り合いなんていないし、作る気もない。
いつまでも長いしたくない。
理由もない。
それに・・・・
(今から急いで着替えれば、1時間ぐらいは、瑞希お兄ちゃんと会えそうだもん・・・)
そんな思いで、教室から一歩外に出た時だった。
「ぶりっ子。」
「あの子、媚びるのが上手だよね~」
「初対面で先生を丸め込んじゃって~上手くやるじゃん?」
そんな会話が聞こえた。
「・・・。」
(馬鹿じゃねぇーの?)
無視した。
振り返ることなく、教室を後にする。
主語はなかったけど、私が動いたタイミングと声の大きさからして私への嫌味だろう。
(私は呼ばれたから、質問されたから、答えただけ。)
それなのに。
(・・・・この塾、嫌かも。)
いいや、塾が嫌なんじゃない。
(塾に来ている『人間の種類』が嫌なんだ・・・!)
足早に建物の外から出る。
1階から2階までが塾のテナント。
建物から出る時、チラッと目だけで見上げれば、窓際から私を見下ろしている人達がいた。
一瞬だったけど、わかった。
確信できた。
「やっぱ・・・『俺』に言ったセリフかよ・・・」
声は小さく抑えたが、凛道蓮スイッチが入る。
自然に気持ちの切り替えが出来たので、よしとした。
ここからヒミツのロッカーに行くまでは、時間がかかる。
ヤマトの家に行った方が、早く凛道蓮になれる。
関西男子からは、好きに出入りして着替えていいと言う言葉と共に、合鍵ももらっていた。
だから家とは逆方向へと進んだ。
1時間でも、10分でもいいから、好きな人に会いたいがために。


