『……その話は何度も聞いた』



柚香は呆れ気味に、ふっと溜息を吐いた。
聞き飽きた、というように電話口で小さく笑っている。



「だって、柚香が変な勘違いするから……」



だから違うんだって証明する為に、あの日の事を何度も話すんだけど。

宮嵜選手の話をする度、同時にあの男の子の話も出てきてしまうから、余計に疑惑が濃くなってしまってる気もする。



『だって……何度聞いても初恋はその男の子の方な気しかしない』
「そんな訳! 宮嵜選手カッコよかったんだよ〜ほんと」



可笑しそうにクスクス笑う柚香にちょっとムッとしながらも、私は負けじと宮嵜選手、宮嵜選手と繰り返した。