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「っ…」

落ちてから気を失っていたらしい。

起き上がるとそこは見覚えのない綺麗な和室だった。

誰かが見つけて運んでくれたのだろうか。

そんなことを考えていると そっ、と襖が開いた。

するとそこに見えたのは私より年下っぽい男の子。

……でもそこの子には耳と尻尾が生えていて。

驚かない筈が無いでしょ、、。

私が言葉も出ずにいると

クス、と笑いをこぼし、その子は口を開いた。

「そんなに見詰めないで下さい」

冗談っぽく笑った後に

「具合の方は大丈夫ですか?」

と続けた。

あまりにも人間らしい素振りに

また少し驚くけれど

「大丈夫」

と答えて相手を見た。

「そうですか。なら俺についてきて下さい。
“朔様がお呼びです”」

“さくさま”そう呼ばれた人はここの偉い人なのかな。

そう考えながら立ち上がり

恐る恐る男の子について行った。

1つの部屋の前に来ると男の子が

「朔様、お連れしました」

と声を掛けた。

すると中から「ありがとう、通して」

と穏やかな声が聞こえた。

男の子が襖を開けると、そこには

____私が夢に見るあの人がいたのだった。

「よく来たね、瑞穂」