空高く、舞い上がれっ。

「え!?な、何してるの?」

「え?……まぁなぁ」

輝空くんの柔らかい笑顔に動揺、緊張してわたしの鼓動はドキドキしていた。
なんでここに輝空くんがいるの?頭がまわらない。

「お前~先生に見つかったらどうする気ダヨ」

「自分だって……」

その時。コツ、コツ、コツ……と、遠くから足音と小さく話し声が聞こえた。

「やべっ、歩舞‼こっち」

「ぇ?えっっ‼」

わたしと輝空くんは足音とは逆の方向へ。前を走る輝空くん、わたしは息を切らすことも忘れて走った。
息をしていたのかすら記憶にない。
ただ、覚えていることは握りしめられた右手の感触だけ。

コツ、コツ、コツ……
「――……ほんと、まったく9組の男子どもは」
「はぁ、あいつらは絶対問題起こすと思いましたよ~明日には反省文を……」
コツ、コツ、コツ……

逃げ込んだ先は女子トイレ。
息をひそめてじっと過ぎていく声を聞いた。