空高く、舞い上がれっ。

「どこいくのぉ?トイレ?」

「ん?ちょっと寧音に集合かけられちゃってさぁー。マジ捕まったら病むんだけどッ」

わたしがそう言うとクスッ、と笑う莉華。

「気をつけなよぉ」

「ハーイ」

上着を羽織りブイサインを向けてから、莉華に背を向けてドアに手をのばす。


「歩舞」

呼び止められもう一度振り返って莉華を見る。

「どーしたの?」

「……やっぱなんでもナイ」

「ん?」

「ほんと何にもないない。行ってらっしゃい」

「うん……行くね?」

どうしたんだろう?
手を振る莉華を残して静かに部屋を出た。


お土産売場はお店を閉める準備をしていた。先生や生徒の姿はなく、寧音もまだ来ていない。

「寧音ったら~絶交してやる」

先生に見つからないように自動販売機の横に丸くなって座り、寧音を待った。

暇だ……見つかったらやだなぁ……
俯きながらぼやっとしていた時──


「歩舞‼」

驚いて上を見上げると寧音の高い声……ではなく、低く少しかすれたような声。
わたしを呼んだのは……輝空くんだった。