笑って見送ってくれた咲に、暇な時はいつでもメールして‼と、手を振ってわたしはその場所に急いだ。

輝空がいるかなんてわからない。
むしろ、いない確率の方がはるかに高いんだということを知っていながら、持ち帰る荷物を抱えて早歩きをする自分はやっぱり単純なんだと思う。それでも、ひとつの可能性にかけたいんだ。


ガチャッ……と、右手でそのドアを開けた。
一階の端にある小さなスペース、新しく増えた進路関係のパンフレット。パソコンは新しいものに取り替えられたらしい。

窓から風を入れる進路室。微妙に変化しつつも変わりのないこの部屋……

「歩舞……?」

輝空が……そこに座っていた。


「……ほんとにいた」

わたしの口からこぼれた言葉の後、沈黙がわたしと輝空の間に流れた。
……ぷっ、と我慢できず笑いをもらした輝空の顔に、わたしは動揺して何も言えない。

「なんだか久しぶりな気がする」

座れば?

輝空に促され隣の席に近寄り、少しためらいつつも椅子を引いた。

どうか高鳴る鼓動に気づかないで。震えるひざをさする。

「な、何してたの?ここで……」

「ん?あぁ、合格体験記書いてた」

回らない舌を叱りたい。