二階から、四階まですべての教室をまわった。
人であふれる職員室、重たいカーテンが窓を隠す視聴覚室、独特なおいのする多目的教室も、輝空のいなそうな音楽室も。

隅々まで探して結局、玄関まで戻ってきてしまった……

「……なんでいない、の?」

校舎内にいるはずなのに、どこを見ても見つからない。……静まった廊下にわたしの足音だけが響いて消える。白い壁に触れながら歩く。

普通科と商業科をつなぐ中央廊下。写真部の掲示物の前で止まった。それを見て唇を噛みしめる。

もう、これでサヨウナラ。
それがわたしの運命だったのかもしれない……

諦めて、向きを変え教室へと足を前へ動かした。

ばいばい……輝空。





「会えた?」

咲は、いじっていたスマホを机にふせて教室に入るわたしの様子を伺う。
何も言わないわたしを見て、そっか……と、解釈をしてくれた。

「そろそろ時間だし、ちょっと集合時間より早いけど、もう道場行くよ」

机の中に残っていた数冊の教科書と紺色の袋に入った体育館履きを持ち、ほとんどカケラとなったチョークで黒板にいたずら書きを描いてわたしと咲は教室を出た。