まだセーラー服を着ていた頃のわたしの前に学ラン姿の譲治がいて。そこは放課後の教室で、夢を語っていた二人がいて。

「強い高校に入って上の世界を見るんじゃなくて、上を目指す高校に入って強くなってみせる。
そう言った頃のお前が一番生き生きしてた。恋愛ゴッコが悪いとは言わないよ、別に人の勝手だし。でも、目標はちゃんともって生きないと時間がもったいねーと思う」

鉄棒の上に座る譲治の言葉に、わたしは耳をすませていた。

「今はまだ落ち込んだっていいけどさ、お前が落ち込んでいる間もそいつは成長してくってこと、覚えておかないと置いて行かれると思うけど?」

ジャンプして譲治は地面を踏む。

わたしがここに立っている間も、輝空はグラウンドで泥だらけになりながら走っているんだ。そう思うと、ちゃんとしなくちゃいけない気がしてきた。

「わたし、輝空のことしか今は考えられない……けど……先がまだ見えないけど」

ちゃんと前見るよ。
そう言うと、それで別にいいんじゃない?と、少しだけ譲治が笑ったような気がした。