玄関を出る時、どこ行くの?と、母の声がした。どこへ行くの、と聞きたいのはわたしだ。ただひたすら前を行く譲治の後をついて歩いた。



小学校の横の細道。
わたしを見て吠える鎖につながれた茶色い犬。
6時を指した公園の時計。
すれ違った自転車をこぐ中学生は、部活を終えて帰る昔のわたしを見ているよう。

なんとなく、譲治がどこへ向かっているのかわかってきた。

その場所についた時、着いた。と、口では言わなかったがそう言いたげに譲治はわたしを振り向く。


高校の校舎を見慣れてしまっていたわたしには、中学校の校舎が古びて見えた。

……グラウンドが狭く感じる。
そう呟いたわたしを見て、そうだな。と、譲治は目を合わせ門を通り奥へと進んだ。


「中学の時、お前言ったよな」

そう言いながら、足下の小石を蹴って進む譲治の背中。風が吹いて、オレンジ色の世界を思い出した。