空高く、舞い上がれっ。

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長いながいナガイ、夏休み。
部活と学校の課外授業に出る以外、ほとんんど家を出なかった。
そんなわたしを心配して寧音はよく家を訪れてくれたが、わたしが話す話といったら輝空のことばかり。

好きだと言ってくれたのはウソだったの?
わたしはこんなに好きなのに辛いよ。
好きでもない女と平気でキスができるんだね。
わたしを一人にしないで。
裏切ったの?
戻ってきてよ。

淀んだ感情、弱音。
自分勝手な言葉を並べることしか出来ないわたし。それでも寧音は飽きず、わたしのもとへ来てくれる。

「会いたいよ」

体中の水分を出し切って泣いて枯れて、また泣いては枯れる。循環、体の仕組みは良くできたものだ。

体に毒が溜まって、スマホを見る事、本を読む事、音楽を聴く事、手を動かす事、歩く事、考える事、しゃべる事、笑う事、息をする事──……
すべて、何もかもやる気になれない。

だったら寝てしまえ…………ネラレナイ。
じゃあ、何か楽しい事を考えよう…………ナニモカンガエタクナイ。

何をしても輝空が消えないんだ。
輝空がいなくなってからわたしの歩調は狂っていた。
体が思い通りに動かない。それが気持ち悪くてイライラ。自分を叩いたり髪を引っ張って。

この苛立ち。わたしの狂った心の中は誰にも理解してもらえないような……絶対わからないような孤独という言葉の似合う感情。

何もしていない事を心が許さない。
何かする事を体が許さない。
死にたくてもシネナイノ。
動きたくても動けない──……