一瞬、緊張が走った。
カキーン──……と、響いた綺麗な音。
晴天に消えるそれに、周りは歓喜の声に満ちた。

『ヤッタ!アユムッヤッタヨ!カッタ!』

涙目でわたしの肩を揺する寧音の声はわたしには届かない。周りの騒音も聞こえない。
ただ一人、無声音の世界の中でホームランを打った藤嶋輝空を食い入るように見ていた。


大会はその次の試合で負けてベスト8止まり。甲子園には行けなかった
別にわたしは甲子園に興味はなかったけど、もう少し試合を見ていたかったと感じていた。

日焼けした肌はピリピリと痛む……
何か少し淋しさが残る、真夏を待たずに終わった高校野球。
わたしの心には、藤嶋輝空の姿が残っていた。