放課後に雨が降り始めた。
傘の無かったわたしは、出来るだけ濡れないようにと近道を通った。……まるであの日のように。
まだ水溜まりの出来ていない地面を駆け抜ける。まだら模様になっていくブレザーの色が懐かしい。
コンビニの脇の道、赤い屋根の家、細道。そしてあの薄暗いお宮が。
ふと、なぜかそこに誰かがいるような気がして立ち止まる。背伸びをして懸命に、その姿を探した。そして──……
「そんなわけない……か」
かかとを地面に落とすと、靴にはもうだいぶ泥がとんでいたことに気づく。
何を期待していたのだろう。雨の混ざった地面を蹴る。より一層、濁った色になる黒いローファーを見てわたしは鼻で笑った。
靴なんてまた買えばいい。そんな風に単純な生き方で行こうかな。
そう思って意味もなく、昔よくやった天気占いのように勢いをつけて靴を飛ばした。
裏を向いて、雨模様に転ぶ靴。手に取りそれをまた履いた。
また新しく買えば綺麗な靴が履けるけど、わたしはやっぱり今の靴がいい。
わたしはやっぱり新しい恋より、輝空くんがいい。
汚れた靴は磨けばまだ履けるよね?


