空高く、舞い上がれっ。

教室に入ろうとしたら、教室から出ようとした誰かにぶつかりそうになった。

「あ……」

「……っ」

それは、気まずい顔をした輝空くん。
一つの入り口に向かい合わせの二人。わたしが避けた方向に輝空くんも避けて、沈黙が出来る。止まったわたしの横を輝空くんは何も言わずにすり抜けた。

こんな関係は、いったい何度目なのか。
目を合わせない合わそうとしない。まるであの時のよう──……一年の頃、避け合った時間。
このままでいたくない──……あの時はそう思ってやまなかったけど今回は……まだ、立ち上がれない。

廊下を歩いていく輝空くんの背中を目で追うことはなかった。



「昨日ねー‼尊の部屋の机の引き出しに……」

寧音はあれから輝空くんの話をあまり出さなくなった。気を利かせてくれているのかもしれないし、深い意味はないかもしれない。
わたしには、寧音が何を考えているのかはわからないけど……