「ちょ、わりぃな……」

わたしは、いいよー。と言ってスマホを取り出そうと慌ててカバンをあさる輝空くんを見ていた。その時、勢い余って財布を落としてしまった輝空くん。

「何やってんの~」

そんな姿の輝空くんを笑い、中身が飛び出てしまった財布を拾おうとしゃがんで財布と中の物を拾い上げる。

「何、これ……?」

パシッ‼と、素早く輝空くんはわたしの手元のそれを奪いあげた。

無言の空間が二人の間に出来上がる。何があったのかわからない。
わたしの顔からは告白する前の緊張感も笑顔も消えていた。

財布と共に拾い上げた物の中にあったのは……

「……誰?」

輝空くんと女の子が写っているプリクラ。
輝空くんはわたしの問いに答えない。
ねぇ、輝空くん。隣で笑っている人は誰ですか?


夜の街に、虫が鳴く。
静かだから、会話なく歩くわたしと輝空くんの距離が目立つ。

「さっきの……」

やめて‼

「あれ……さ」

聞きたくないよ……

「……俺の」
「やめてッ‼」

わたしが立ち止まると、輝空くんは後ろを振り返ってわたしを見る。

「輝空くん、彼女いるなら……こういうことしちゃダメだよ?
家、すぐ近くだから、もういいよ‼」

輝空くんが言葉を入れる隙を作りたくなくて、わたしは全速力で夜を駆け抜ける。
わたしは、一度も振り返らずに家まで帰った。長い間、走った気がする。

今日は雨が降っていないから、代わりにずっとお風呂場でシャワーを浴びた。