「男の子はよく食べる生き物だね」
月明かりと電灯の明かりの混じった細道を、行きよりもゆっくりとしたペースで歩く。
「満腹感は幸福感だからな」
意味わかんないしっ。
クスッ、と笑って隣でバイクを握る輝空くんを見たら、なんだか顔が火照ってきてすぐに前を向き直した。
言わなきゃ……気持ちを……。トクントクン……と、早くなる鼓動に押しつぶされそうな緊張が重なる。
ねぇ、輝空くん。輝空くん、ちょっと言い?あのさ、輝空くん……
輝空くんに話しかけようと言葉を出そうとするが、胸を通った言葉は何度も喉で止まってしまう。
「ス……ストップ‼」
やっと出た言葉は、なんともかわいげのない声。自動販売機の明かりで輝空くんの顔がよく見える。きっとわたしの顔も。
「どうした?」
ドクンドクン……この鼓動の音もわたしの気持ちも、もう聞こえるんじゃないですか?
わたしを見つめる優しい目に溶けてしまいそう。
「わ……わたしね」
「ん?」
わたしは輝空くんを……
──……♪~
決心の途中で急に鳴った着信音に、二人の間に張りつめた緊張感がパチンッ、と切れた。


