いつもと違うわたしにしたのは、今日をいつもと違う日にしたかったから。
こんなわたしは、変じゃない?

輝空くんを待っている間、緊張が膝をガクガクと笑わす。30分も早く来たのは失敗だったかもしれない、と思わせるくらいわたしの鼓動は高鳴り続けている。
輝空くんを待つ時間はもどかしくて、でも愛おしい時間だった。


──……♪~
スマホの着信音は2秒で切れた。

へ?

──……♪~

「もしもし?」

『そとそと‼』

プツップープー……
切られた通話、訳もわからず外を見る。そして、急いで雑誌を置いて駆け出した。

「ごめん、待たせたッ」

輝空くんが来たのは、ふと気づけば6時を20分ほど過ぎた頃。
白いヘルメットをかぶったまま謝る輝空くんに、大丈夫だよ。と、小さく微笑んで返す。
これが言いたかったんだッ、と心の中でガッツポーズ。

「これが前に言ってたヤツね」

目の前にあるのはまだ新しい黒いZX。