「やめー!」
試験監督は前回と同じ人だった。
やっぱり私のことは気に入らないのか、さっきからずっと私を睨んでいる。
だけどそんなのお構い無しに、テストを受けていた。
今回は全問解ききることができた。
不合格が発表された時から、ずっと鬼のように勉強した成果が出たみたい。
前回は自分の成績に浮かれてしまい、熱心に勉強をせずに不合格へと陥った。だけど、二度同じことは絶対に繰り返したくなかったんだ。
合格か不合格かなんてまだわからないけれど、悔いなくやりきることができた。
ザッと周りの人が立つのと同時に私も立った。
この間私に注意してきた試験監督は、少し驚いた顔をしていた。
あの時は、頭が真っ白で何もできなかっただけなんだから。
長い列になって、面接会場へと場所を移る。
面接は今回も、何度も何度も練習した。
私が一番悔しい思いをした面接。絶対に失敗したくはなかったから。
私が医者になりたい理由だって見つかったし、何を言われても自信満々に答えられる気がする。
そしてついに私の番が回ってきた。
コンコンコンと三回ノックをしてから返事を待つ。
「どうぞお入りください」
その声を確認すると、ゆっくりと扉を開けた。そして閉める。
「失礼します」
きちんとお辞儀をして、面接官と目を合わせた。面接官は前回と同じ人で、また私を睨みつけていた。けど私は怖がったりなんかしなかった。
「虎の丘高等学校の桜井実華です」
そう言って椅子に座った。
面接官は少し驚いた顔をしていた。
「あ、えー、二回目の試験ですが、なぜこの学校を希望されたのですか?」
「立派な医者になるためです」
即答できた。言っていることは前回と同じはずなのに、やっぱりどこか違う。それは気持ちが変わったからなのかな。
「な、なぜ医者になりたいと思うのですか?」
面接官はさっきよりも声が小さくなり、その声は少し震えているようにも思えた。
そんなの簡単だ。もう理由なんて一つしかないよ。
「この間、私の友達の弟が亡くなりました」
こみ上げてきそうな涙をギュッと堪えた。
「その子の担当だった医師は、その子が亡くなる直前まで一生懸命助けようとしていたと聞きました。何かいい方法はないかと、ずっとそばにいてあげていたということも」
もちろん、お父さんの病院を継ぎたいという気持ちに変わりはない。
だから
「それを聞いた時に決意しました。"私はお父さんの病院を継げるように、強い立派な医者になる"と」
前回、絶対に緩むことのなかった頬が、ふわりと緩んだ。
面接官も表情を変えた。眉を下げて目を細めて笑った。
「たまげたなぁ」
面接官がぼそりと呟いた言葉が、なんだか嬉しかった。
試験監督は前回と同じ人だった。
やっぱり私のことは気に入らないのか、さっきからずっと私を睨んでいる。
だけどそんなのお構い無しに、テストを受けていた。
今回は全問解ききることができた。
不合格が発表された時から、ずっと鬼のように勉強した成果が出たみたい。
前回は自分の成績に浮かれてしまい、熱心に勉強をせずに不合格へと陥った。だけど、二度同じことは絶対に繰り返したくなかったんだ。
合格か不合格かなんてまだわからないけれど、悔いなくやりきることができた。
ザッと周りの人が立つのと同時に私も立った。
この間私に注意してきた試験監督は、少し驚いた顔をしていた。
あの時は、頭が真っ白で何もできなかっただけなんだから。
長い列になって、面接会場へと場所を移る。
面接は今回も、何度も何度も練習した。
私が一番悔しい思いをした面接。絶対に失敗したくはなかったから。
私が医者になりたい理由だって見つかったし、何を言われても自信満々に答えられる気がする。
そしてついに私の番が回ってきた。
コンコンコンと三回ノックをしてから返事を待つ。
「どうぞお入りください」
その声を確認すると、ゆっくりと扉を開けた。そして閉める。
「失礼します」
きちんとお辞儀をして、面接官と目を合わせた。面接官は前回と同じ人で、また私を睨みつけていた。けど私は怖がったりなんかしなかった。
「虎の丘高等学校の桜井実華です」
そう言って椅子に座った。
面接官は少し驚いた顔をしていた。
「あ、えー、二回目の試験ですが、なぜこの学校を希望されたのですか?」
「立派な医者になるためです」
即答できた。言っていることは前回と同じはずなのに、やっぱりどこか違う。それは気持ちが変わったからなのかな。
「な、なぜ医者になりたいと思うのですか?」
面接官はさっきよりも声が小さくなり、その声は少し震えているようにも思えた。
そんなの簡単だ。もう理由なんて一つしかないよ。
「この間、私の友達の弟が亡くなりました」
こみ上げてきそうな涙をギュッと堪えた。
「その子の担当だった医師は、その子が亡くなる直前まで一生懸命助けようとしていたと聞きました。何かいい方法はないかと、ずっとそばにいてあげていたということも」
もちろん、お父さんの病院を継ぎたいという気持ちに変わりはない。
だから
「それを聞いた時に決意しました。"私はお父さんの病院を継げるように、強い立派な医者になる"と」
前回、絶対に緩むことのなかった頬が、ふわりと緩んだ。
面接官も表情を変えた。眉を下げて目を細めて笑った。
「たまげたなぁ」
面接官がぼそりと呟いた言葉が、なんだか嬉しかった。