──プルルル

さっきからずっと家の電話が鳴り止まない。

寝起きの俺はあくびをしながら、受話器を手に取った。

「もしもし!」

それは、耳が壊れそうなくらい大きな母さんの声だった。

かなり興奮している様子だった。

「なに?」
「翔が受験するって!」

その言葉でハッと目が覚めた。

なぜか嬉しくて、足で思いっきりクッションを蹴り飛ばした。

「ドクターストップは?」
「それが、状態がいいから大丈夫だって!」

最高だ。今すぐ翔のそばに行って、おめでとうとお祝いしてあげたい。

「あ、もう少しで翔の誕生日じゃん?あいつの好きなケーキの味知ってる?」
「昔はずっとショートケーキをたべてたけど、今は何が好きなのか分からないわ」

母さんでもわからないのか……でも昨年も二人でケーキ食べてたような……

「でもチーズケーキは嫌いなの。元々チーズ嫌いだからあの子。だからなんでもいいと思うよ」

母さんはまた楽しそうな声を出した。俺もなんだかワクワクしてきた。

「じゃあまた」
「うん。また何かあったら連絡するね」

そう言って電話を切った。

なんだかワクワクするし、ソワソワする。

きっと翔が受験を受けられることが、嬉しいのだろう。


朝ごはんを乗せたお盆をもって、二階まで行く。

「父さん!聞いて、大ニュース!」

お盆を手渡しして、ベッドに座る父さんの向かい側にある、ソファに腰掛けた。

「翔が受験受けに行ったって!」
「ゴホンゴホン!えぇ!?」

お茶を飲んでいた父さんが、喉をつまらせながら目を見開いた。

「翔が受験をするのか!やったなぁ」

父さんは朗らかに笑っていた。

「お前も負けてられないぞ」
「うん」

父さんは俺の背中を強く叩いた。

その瞬間に、俺のスイッチが入った気がした。