ザァザァと激しく降っている雨に、傘を突き出す。

とぼとぼと歩いてみるけど、全然進まなくて、誰かが通せんぼしてるんじゃないかってくらい。

そして脳内を駆け巡るのは後悔だけ。

どうしてあの問題が解けなかったんだ……

頑張って勉強したはずなのに……どうして。

面接だってそうだった。

自分はなぜ医者になるのか。それはお父さんの病院を継ぐため。それはいけないことなのか。そんなはずない。

だってきちんと親孝行してるってことじゃない!子供がいずれかしなくてはならない、親への恩返し。これは大きな恩返しじゃない。

何がいけないんだ、間違っていないじゃない!

気持が溢れる出してしまい、傘を思いっきり地面に投げ捨ててしまった。

雨は激しく体にぶつかっていく。濡れるとかそんなのどうでもよくて、ただ雨に打たれたかった。

「どうして!どうして私はこんなにダメなの!!」

背負っていたバッグも地面へ突き落とす。

乱れた髪の毛が濡れて顔にかかる。

ローファーが水溜りに浸かって、靴下までびしょ濡れになっていた。

足に力が入らなくなってその場に崩れ落ちてしまった。

よくわからない涙が出てきそうで、今すぐ誰かに慰めてほしくてたまらなかった。

「何してんの」

その声が誰なのかはすぐにわかった。

「なんでいるの……」

赤坂。私と一日違いで、昨日が受験日だった赤坂がどうして……

赤坂はニッコリ笑って私と同じように、濡れたアスファルトに座り込んだ。

「俺、受験ダメかもしれない。問題が難しかった。もっと勉強しなきゃいけないんだな」

赤坂は目を瞑って上を向いていた。顔にはたくさんの雨が当たっていて、何かから解放されようとしているように見えた。

私も真似してみる。

顔や体が雨によってだんだん冷えていく感覚が、なんだか気持ちよかった。

「私も。今回ダメかもしれない。全部ダメだった……」

次々と涙が出てしまう。一度出ると止まらなくて、もう雨なのか涙なのかわからない状況になっていた。

「そうか」

赤坂は優しく私を抱きしめてくれた。それは私を安心させるもので、決して変な感情はどこにもない。

安心してしまって余計に涙が溢れ出てくる。もう声も出てしまって、子供みたいに泣きわめいていた。

「次絶対頑張ろうな」

耳元でそう呟くと、また最後にギュッと抱きしめてくれた。

「へっくしゅん!」

鼻をさする私を見て赤坂はクスリと笑った。

「風邪になったら大変。もう家に帰った方がよさそうだね」

どこかまだ少し不安で、赤坂の服の裾をギュッと握りしめた。

「ありがとう」

それだけ言って投げ捨てたバッグと傘を拾って、走って帰った。