「やめー!」

試験監督の大きな声が心臓に突き刺さりそうになった。

解答用紙は後ろから集めていかれて、自分のも回収されてしまった。

終わってしまった……終わってしまったんだ……

なんだか負け犬になった気分で、異様にハラハラする。もしかして落ちたんじゃないかって。

「桜井さん」
「あ、すみません」

試験監督の厳しい声で我に返った。

ぼーっとしている間に、周りの人はみんないなくなっていたのだ。

次は面接で、みんな会場を移っていたらしい。

フラフラと案内される道を進むけど、全く面接する気になんてなれない。

そして一人ずつ個室に入っていく。みんな椅子に座って待っている時も、気を緩めることなんてなかった。

学校でやった面接の練習。先生と二人で何度もやらされた記憶がある。

私はそこそこ得意だったけど、「念のため」と言って何度も練習させられたんだ。だから自信があってもおかしくないはずなのに。

すぐに自分の番が回ってきた。試験監督達は私をじろりと睨みつけていた。まるで犯罪者を見守る警察官みたい。

ふわりと立ち上がって扉の前に立つ。コンコンコンと三回ノックをして返事を待った。

「どうぞお入りください」

その声を確認してから扉を開けた。そして閉める。

「失礼します」

適当に礼をして面接官と目を合わせた。面接官までもが私を睨んでいたのだ。

その目線のせいで、だんだん心臓の速さが速くなってきた。

「虎の丘高等学校の桜井実華です」

そして椅子に座った。ここまではだいぶ順調だ。

ここからが問題だった。

いったいどんな質問が飛び交うのか。そんなこと誰にも予測できない。それは面接官が決めることだから。

「あなたはなぜこの学部を希望されたのですか?」
「医者になりたいからです」

これは言われるなとわかっていた。だけど、この先が少し不安。ずっとハラハラしっぱなしだ。

「では、なぜ医者になりたいのですか?」
「父の病院を継ぐためです」

これもなんとなく考えていた。次はお父さんのこと詳しく聞かれたりするのかな。

「病院を継ぐためだけに医者になるのですか?」
「は、はい」
「もし継がなくてよかったら、違う職業に就くんですか?」
「……!」

どうして……どうしてそんなことを聞くの。

私はお父さんのために医者になると言っているのに。それは立派なことではないの?いけないことなの?

心の奥がズキズキして、それが喉まできて吐き出しそうになっていた。

行きしに濡れたスカートを、ギュッと力強く握りしめた。唇も思いっきり噛み締めて。

もうその話題から離れてほしかった。だけど面接官はそんなに優しくなかった。

「そんな気持ちで医者になろうだなんて、甘すぎますよ。もう少し考え直してみてはどうでしょう」

その言葉は私を絶望させた。

もうダメだ……何をやってもダメなのかもしれない。