【桜井実華】
愛佳はまだ赤坂にあまり認知されてないし、話したことも数回しかないはず。だから今日はチャンスとして行かせてみた。
ちゃんと会話できてるかな?
こっちはこっちで大変だ。
きっと翔くんはまだ私の名前を知らないし、どんな人なのかなんて全くわからないのだろう。
「あの……どなたですか」
案の定、初めに名前を聞かれた。
「桜井実華だよ。赤坂……優馬と同じ学校の」
赤坂といえば翔くんも赤坂だった。だからこの場では優馬と言っておこう。本人の前では絶対言ってやらないから。
ふーん、と軽く相槌を打って私を見つめた。
「翔くんってすごく優しいんだね。お母さんを喜ばせるためだなんて、私できっこないよ」
小学生だというのにお母さんのためだなんて、普通口に出すことすらできないよ。
翔くんは恥ずかしそうに笑っていた。
「母さんのこと嫌いになったけど、受験はちゃんとする。今までの努力の成果を出し切りたいし」
とても意志が固い子なんだなと思った。本当にしっかりしている。赤坂とは正反対だ。
すると、翔くんは何かを思い出したかのようにクスリと小さく笑った。
その笑いには少し意地悪な笑いも混じっていて、なんだか嫌な感じがした。
「桜井さんって、優馬と付き合ってるんですか?」
ニヤッと笑った翔くん。本当に意地悪だ。
なんでそうなっちゃうのかな!別に好きとかでもないのに、どうしてそんな誤解されなきゃならないの?
「付き合ってないよ!私と優馬はただの……ライバルだから」
はは、と軽く笑ってみせると翔くんはまた意地悪な笑みを浮かべた。
その笑い方は全く赤坂と似ていなくて、兄弟とは思えないくらいだった。
「でも、最近怪しいんですよね。なんか性格も変わったし、何よりも怪しいのがお弁当箱ですよ」
その瞬間ビクッと反応してしまった。お弁当箱ってまさか……
「誰もお弁当なんか作ってないはずなのに、いつもお弁当箱を洗ってるんですよ。なんででしょうね」
そのまさかだった。
私達は、作ってあげる代わりに弁当箱は洗って返す。という決まりを作っていた。
知らない人からすれば明らかに怪しいのだろう。だけど私はそんなのじゃないから!
「お弁当作ってあげてるのは事実だよ。だけど、好きだからとかじゃなくて……」
翔くんは楽しそうに笑っていた。まだ納得してないみたいで、勝手に私を彼女だと勘違いしているまま。
でも、そんな翔くんに赤坂のこと教えてあげたいなって思った。
「優馬はね、すごいんだよ。辛いことも苦しいこともたくさんあるのに、色んなことやりきろうと頑張ってる。勉強だって頑張ってるんだよ。私はそんな優馬を尊敬してるんだ」
近くにあった椅子に座り込んだ。すると、翔くんは少し黙ってしまった。
今までいじめてきた人がそんな人だとは思っていなかったのだろう。
「優馬頑張ってるんだ。俺も頑張らないとね」
翔くんはニコッと微笑んだ。もしかして優馬のこと認めた!?
それがなんだか嬉しくてうんうんと頷いた。
「桜井さんも頑張ってくださいね。色々と」
「色々って……」
私の質問には答えずに、ニヤッと笑って窓の外を眺めていた。
愛佳はまだ赤坂にあまり認知されてないし、話したことも数回しかないはず。だから今日はチャンスとして行かせてみた。
ちゃんと会話できてるかな?
こっちはこっちで大変だ。
きっと翔くんはまだ私の名前を知らないし、どんな人なのかなんて全くわからないのだろう。
「あの……どなたですか」
案の定、初めに名前を聞かれた。
「桜井実華だよ。赤坂……優馬と同じ学校の」
赤坂といえば翔くんも赤坂だった。だからこの場では優馬と言っておこう。本人の前では絶対言ってやらないから。
ふーん、と軽く相槌を打って私を見つめた。
「翔くんってすごく優しいんだね。お母さんを喜ばせるためだなんて、私できっこないよ」
小学生だというのにお母さんのためだなんて、普通口に出すことすらできないよ。
翔くんは恥ずかしそうに笑っていた。
「母さんのこと嫌いになったけど、受験はちゃんとする。今までの努力の成果を出し切りたいし」
とても意志が固い子なんだなと思った。本当にしっかりしている。赤坂とは正反対だ。
すると、翔くんは何かを思い出したかのようにクスリと小さく笑った。
その笑いには少し意地悪な笑いも混じっていて、なんだか嫌な感じがした。
「桜井さんって、優馬と付き合ってるんですか?」
ニヤッと笑った翔くん。本当に意地悪だ。
なんでそうなっちゃうのかな!別に好きとかでもないのに、どうしてそんな誤解されなきゃならないの?
「付き合ってないよ!私と優馬はただの……ライバルだから」
はは、と軽く笑ってみせると翔くんはまた意地悪な笑みを浮かべた。
その笑い方は全く赤坂と似ていなくて、兄弟とは思えないくらいだった。
「でも、最近怪しいんですよね。なんか性格も変わったし、何よりも怪しいのがお弁当箱ですよ」
その瞬間ビクッと反応してしまった。お弁当箱ってまさか……
「誰もお弁当なんか作ってないはずなのに、いつもお弁当箱を洗ってるんですよ。なんででしょうね」
そのまさかだった。
私達は、作ってあげる代わりに弁当箱は洗って返す。という決まりを作っていた。
知らない人からすれば明らかに怪しいのだろう。だけど私はそんなのじゃないから!
「お弁当作ってあげてるのは事実だよ。だけど、好きだからとかじゃなくて……」
翔くんは楽しそうに笑っていた。まだ納得してないみたいで、勝手に私を彼女だと勘違いしているまま。
でも、そんな翔くんに赤坂のこと教えてあげたいなって思った。
「優馬はね、すごいんだよ。辛いことも苦しいこともたくさんあるのに、色んなことやりきろうと頑張ってる。勉強だって頑張ってるんだよ。私はそんな優馬を尊敬してるんだ」
近くにあった椅子に座り込んだ。すると、翔くんは少し黙ってしまった。
今までいじめてきた人がそんな人だとは思っていなかったのだろう。
「優馬頑張ってるんだ。俺も頑張らないとね」
翔くんはニコッと微笑んだ。もしかして優馬のこと認めた!?
それがなんだか嬉しくてうんうんと頷いた。
「桜井さんも頑張ってくださいね。色々と」
「色々って……」
私の質問には答えずに、ニヤッと笑って窓の外を眺めていた。

