【赤坂翔】
目を覚ますと、なぜか周りに人がたくさんいた。しかもみんな心配そうで。

起き上がろうとすると心臓にドンと踏みつけるような痛みがした。

そういや、そうだった。ソファで谷口さんと話していたら急に苦しくなったんだ。その後は覚えていないけど。

「翔」

母さんが俺の手をぎゅっと握った。

「母さん。もうやめにしないか」

自分が小学生らしくないことはわかってる。それが誰のせいなのかも。こんなに甘やかされる生活、もうやめにしたかった。

別に優馬のことを認めたわけではない。

目の前には唖然とする母さんの姿があった。いきなりの言葉に驚きを隠せなかったのだろう。

「ねぇ、翔うそよね?変なこと言わないでよ。はは、もうやだわ」

そう言ってまた手を握りしめた。それはさっきよりも力強かった。

「やめろって!」

思いっきり手を振り払うと、その場にいた全員が目を丸くした。

「翔。余計に悲しくなってしまうかもしれないけど、これは見てほしい」

優馬が目の前にノートを差し出してきた。それは少し使い古したあとがあったけど、ボロボロというわけでもなかった。だけど優馬の差し出すものなんて受け取りたくない。「翔くん、取って」と谷口さんが言うから、しょうがなく受け取ってやった。

「なんで、ねぇなんで」

後ろの方で母さんが震えていた。目が大きく見開いている。それは目玉が飛び出しそうなくらい。

「なんで優馬が持ってるの……」

そんな母さんを見ていると嫌気がさす。きっとこの中には、何か大変なことが隠されているんだって。

「なんでって聞かれても困るな。別に探ったわけじゃないから」

優馬は開けて、と声にはせずに言ってきた。

母さんと目が合うと、開けないでと訴えてくるから、母さんの方は見ないようにした。

そしてノートをゆっくりと開けた。その中に書いてあることはかなり衝撃的なことだった。