【桜井実華】
冬休みはあっという間に過ぎてしまう。

今年は毎年しているクリスマスパーティだってしなかった(お正月はしたけど)。

もう学校は始まってしまったんだ。早すぎるよ。

今日は空の機嫌があまり良くない。今すぐにでも雨が降りそう。

そしていつもなら一緒に屋上で話しているはずの相手、赤坂が珍しくいない。

来ないなんておかしいよね。

「あの、実華先輩!」

どこからか愛佳の声が聞こえた。周りをグルグル見渡していると、扉のところにいることがわかった。かなり焦っている様子だった。

「赤坂先輩、来てませんよね。私すごく心配なんです」

愛佳が心配そうなのはすぐに伝わった。私と愛佳の気持ちは違うけれど、きっと心配している気持ちは一緒だ。

「行くか」

愛佳はうんと頷いてくれた。

今から学校を出てしまえば遅刻決定。だけど、愛佳はそんなのどうでもいいと言ってくれた。

赤坂は何か悩みを抱えているんだと思うし、理由があって来ていないんだろう。

少しだけでいいから何か声をかけてあげなきゃ。



学校の近くにある家にはすぐに着いた。

──ピンポーン

インターホンを押すと、一人の女の人が出て来た。お母さんかな……

「赤坂のクラスメイトの桜井実華です。赤坂に用があって参りました」

するとお母さんらしき人の顔色が一瞬にして変わった。「どうして」と驚いた顔をしている。赤坂のことを心配する人が現れるとは、思っていなかったのだろう。