「寒っ!!」

いきなり外に出されて凍えそうになる。どうしてこんなことするの!犯人なんて見つかるはずないのに。

「いいから、はい」

渡されたのは手袋とマフラー。一応装着してみるけど、やっぱり寒い。

「思ったんだけど、もしかして同じような被害を受けてる人がいるんじゃないかな」

望が探偵みたいに眉を寄せて言う。それが本気なのか、わざとなのかはわからないけど。

「そうだね。お花を全部取っちゃうって、何か意味がありそうだよね」

この花可愛い、と思っても取るのは一、二本だろう。全て取ってしまうなんてきっと深い意味があるんだよね。

そして私達はグルグルと歩き回り始めた。

雪が積もっていて、歩く度にズシズシと音がする。後ろを振り向けば、足跡がちゃんと残っているのが確認できた。もし道に迷ったらここを辿ればいい。

「あの事件は忘れられんなぁ」

小さな家の前に二人のおばあさんが話していた。

あの事件とは……

「本当にびっくりしたわ。花がすっからかんになくなってなぁ」

私達は顔を見合わせて頷いた。

きっと間違いない。そう確信した。

「あの……その事件について詳しく伺ってもよろしいですか?」

すると、二人のおばあさんは私達を睨みつけてじーっと観察した。

まるで不審者を見るような目で。

「なんだあんたら」
「なんのようだい」

やっぱり私達を不審がっているようだった。

「実は私達も被害者なんです。野原に割いてた花が全部抜かれてて」

ふむ、と眉間にシワを寄せてじっくり私達を見回した。

すると家の中から若い女の人が出てきた。その人はとても顔が整っていて、大人な雰囲気を醸し出していた。

「あの、よかったらお話します」
「ほんとですか!」

嬉しそうに望が声をあげた。私も思わず飛び跳ねそうになった。

だってなんだかドキドキするんだもの。

「あれは、確か十三年前だよね。私がまだ小学生の頃だったわ。広かった庭に花をたくさん植えていたの。毎日毎日面倒を見て、ペットみたいに可愛がっていたわ。だけどある日酷い出来事が起きたのよ」

とても悲しそうに語る女の人の声はだんだん小さくなっていった。

私もその気持ちが理解できる。本当に悲しかった。世界がひっくり返ったみたいに。

「それでその時の様子は見ていたんですか?」

望が真剣に聴き込んでいた。本当に探偵みたい。

あ、と思い出したように女の人の口がまた動き始めた。

「小さい……幼稚園児くらいの女の子。白いワンピースを着てて、赤い髪ゴムで二つ結びをしていて、足は裸足だった。手に大きな袋を持っていて、その中に花を詰めていたの。実はその様子を見ていたんだけど、何が起きているのかわからなくて止めることができなかったの」

ため息をついて胸元に手を当てていた。本当に悲しそうだった。

そしてかなりわかってきたことがある。その女の子の容姿はだいたいわかってきた。だけど、十三年前ということは、今はもう中高生になっているはず。見つけること、できるのかな。

「ありがとうございました」

私達は深くお辞儀をしてその場を立ち去った。

女の人は優しく手を振ってくれた。

「ねぇ、花屋さん行ってみない?」

私が考えたのは、本当に単純なこと。花を取るということは花屋さんにもきっと行くはず。それにこの町には花屋さんは一軒しかない。可能性はあるはず。

「うん、行こう」

いつの間にか私もその気になっていたんだ。