半分だけでもかなり重たい書類。この倍を香織さんは一人で運んできたのか。

 そんな想像をしては疲労感を感じていた私が、何やら視線を感じて顔を横に向けると、香織さんはにやにやとした表情で私の方を見ていた。

「部長室で何してたの? 二人きりで、何だかやらしいわね」

 荷物が減り余裕ができたからなのか、さっきまでとは明らかに明るい表情を浮かべている。

「残念ながら、週末のデートに行けない、という悲報を告げられただけです」

 はあ、と溜息をつく。そんな私の横で香織さんはくすくすと肩を揺らして笑っていた。

「何が面白いんですかー、もう」

 こっちは当日の服まで準備して楽しみにしていた初デートを断られてショックだというのに。

 頬に空気を溜めて怒ったような表情をつくると、香織さんは「ごめんごめん」と言って笑った。

「でも、何だかんだで仲良くやってるんでしょう?」

「それは……それなりに、仲良くさせていただいてます……」

「あはは、否定しないのね。ちょっと心配してたんだけど、まあ、上手くいってるようで良かったわ」

「心配、ですか?」

「うん。そうそう。中幡さんのこととかあるじゃない? だから、ちょっと心配で……」