「夕ご飯……というか、もう夜食の時間になるけど、何食べたい?」

 壁に掛けられた時計に目を移す。時計の針は短針も長針もあと少しで12時を差そうとしている。

「えっと……オムライスが食べたいです!」

 こんな時間に食べたら太ってしまうな、という気持ちも頭の片隅にはあったものの、結局、聡介さんの手料理を食べてみたいという気持ちが勝ってしまった。

「オムライスだな。ちょっと待ってて」

 笑顔で頷くと、カウンター越しのキッチンに移動し、慣れた手つきで材料の準備と料理を始める聡介さん。

 私も家で時々料理は手伝うけれど、彼がこうも慣れた様子だと少しばかり焦りを感じる。


「聡介さん、聡介さん」

 しばらくの間、リビングから見える聡介さんの様子を覗き続けたけれど、少し寂しくなってしまい、私もキッチンへ移動した。

 すると、彼は料理をする手は止めないまま笑顔で「どうした?」と返す。

 これだけでもう幸せで、笑みが溢れて止まらない。料理をしている姿さえ誰よりも格好良くて、素敵で、胸がぎゅっと鳴った。

「料理してる聡介さんもかっこいいなあ、と思って」

 つい、正直な気持ちを零す。すると、聡介さんは一瞬手を止めた。

「ほら、またそういうことを言ってないでリビングで待ってなさい」

 あと少しでできるから、と私の髪を撫でる大きな手。

 嬉しいけれど、なんだか少しだけ腑に落ちないのは、子供扱いされているような気がしてしまうからだろうか。