二人手を繋ぎ、夜道を歩くこと約十分。綺麗な高層マンションの10階に上がると、一番奥にある部屋の扉の前で神木部長が立ち止まった。

「はい。どうぞ」

 ここまで来て、今更緊張し始める私。

 ドアを開いてくれている聡介さんに先に部屋へと通されると、リビングに入り、フローリングの上に敷かれた白いラグの上に座った。

 白を基調にしたシンプルな部屋は、物も少なく生活感があまり出ていないようにも思えた。


「聡介さんの部屋、私の部屋よりもずっと綺麗です」

「はは。それは良かった、のかな?」

 頭の中に自分の部屋を思い浮かべる。漫画や雑誌、服にカバン。荷物が多いからなのか、ごちゃごちゃとして見える私の部屋とは全く比にならないほど綺麗な部屋で、私は物珍しいものでも見るかのように見入っていた。

「こらこら、そんなにじろじろ見ない。言っておくけど、なにも面白いものなんて置いてないからな」

 すっと、私の視界に突然入り込んで来たのはグラスに注がれたお茶。

「あ、ありがとうございます」

 聡介さんからグラスを受け取り、一口お茶を喉に流し込む。すると、彼は「あ」と何か思い出したかのように声を漏らした。