「───ということがありまして、部長とお付き合いすることになりました」

 翌日のお昼12時。私は、香織さんといつもの喫茶店に入ると、昨日の出来事を詳細に話し照れ笑いを浮かべた。

 えへへ、と声を漏らしながら笑い続ける……いや、笑わずにはいられない浮かれポンチな私を見ている香織さんは、口をぽかんと開けている。

「あまりの急展開に、驚きすぎて言葉が出ないんだけど」

「あはは、私もです」

 この急展開についていけないのは、私も同じだった。幸せを噛み締めてはいるものの、未だに昨日の出来事は嘘だったのではないかと何度頬を自分でつねったことか。

「でも、やっぱり好きだったんじゃないのよ。部長。それならそうと早く気持ちに応えてくれれば沙耶ちゃんはあんなに悩まなくて済んだっていうのに。しっかりしなさいよね。35歳のおじさんなんだから」

 ね? と私に同意を求める香織さん。私は、そんな香織さんにすかさず「部長はおじさんじゃないです!」とつっこむ。

 香織さんは私のツッコミにくすりと笑った後、ホットのブラックコーヒーをスプーンで一度ゆっくりかき混ぜる。そして、また再び口角を上げた。

「まあ、良かったわ。念願叶ったんだから、仲良くやりなさいね」

 まるで自分のことのように嬉しそうに笑ってくれる香織さんにつられて、私は、また更に笑顔になった。