「今、一気にここ最近のストレスから解放された気がする」

「部長、ストレス溜まってたんですか?」

「まあ、それなりに」

 もう無くなったけど、と言って笑った部長に、私の胸が大きく高鳴った。

「あの、部長……」

「ん? 何?」

 中幡さんと神木部長は付き合っていないという事実に安心したからなのか、それとも、今まで強く自分の気持ちを抑えてきたからなのか。何か、私の中でリミッターが外れたような気がした。

「さっきも言いましたけど、私、神木部長のこと好きです。図々しく、しつこく、まだ好きです」

「うん。さっきも聞いた」

「諦めようって思ってたんですけど……やっぱり、いつか、神木部長に同じ気持ちになってもらえるように頑張ることにします!失礼しまし……」

 今まで溜まっていたぶんを言い逃げしてやろう、と思い、軽く頭を下げると部長室を出ようとした私。すると、部長室を出る手前私の右腕は引っ張られ、気づけば部長の腕の中にすっぽり埋められていた。

「えっ⁉︎ あ、あれ⁉︎」

 突然すぎる出来事にただあたふたとする私の頭上から「言い逃げはさせません」と降ってくる部長の声。

「え? ま、待ってください!言い逃げ、しようとしましたけど……そんなことより、これ、なんですか⁉︎ ここ、会社ですよ⁉︎」