神木部長、婚姻届を受理してください!


「ちょっと、今のはやばい。立川ちゃんって、そういうとこ本当に可愛いよね。そういう真っ直ぐな気持ちを伝えられるのに男は弱いからさ。なんか、俺のことじゃないのに俺がぐっときちゃったわ」

 少しだけ頬を赤くして笑っている西内さんに、私まで恥ずかしくなって顔が熱くなる。

「なんか、今日、超暑くない⁉︎」

「あ、暑いですね!」

 二人して両手で風を仰ぎ、顔の火照りを冷やす。すると、西内さんが笑顔のままで再び口を開いた。

「ってことだからさ、立川ちゃん」

「はい」

「立川ちゃんの今までの言動とか、気持ちとか。そういうの、部長は絶対に迷惑だなんて思ってないと思うよ。むしろ、嬉しかったからこそ俺にあんなこと言ったんだろうし。彼女がいたからって無理に諦める必要もないんじゃない? これから、何があるか分からないんだしさ」

 まあ、略奪はオススメしないけど。

 なんて、少しだけ苦い顔をして言った西内さんは、きっと略奪愛の経験があるんだろうな、なんて勝手に勘ぐっている私の肩にぽん、と西内さんが手を置いた。

「何かあったらいつでもおいで。それじゃあ、俺はお先に仕事戻りまーす」

 振り返り、西内さんの後ろ姿を目で追いかける。彼は、右手を上げ、ひらひらと振りながら小さくなっていった。