「西内と付き合ってるって、本当か?」
「……えっ?」
部長の言葉を聞いたあと、私はしばらく言葉の意味を理解しようと試みていた。理解ができた瞬間に、私の口からは間抜けな声が漏れてしまった。
「え?」
私の間抜けなリアクションにつられたのか、目の前の部長まで目を丸くして間抜けな声を漏らす。
私が西内さんと付き合ってるだなんて、部長は一体誰に聞いたというのだろうか。
「あれ、西内がそう言ってたんだけど……」
「ええっ⁉︎」
ぼそり、と小さく呟いた部長の言葉に、私は大きな声を出すと、すぐさま再び口を開いた。
「まさか!違います!付き合ってなんかないです!ど、どうして西内さんはそんなこと……」
西内さんに告白をされたこともなければ、それらしい態度をとられたことだってない。私と西内さんは、間違いなくただの上司と部下だ。それなのに、どうして彼はこんな嘘をついたのだろうか。
考えても考えても西内さんの考えていることが分からず、私は小さく溜息を吐いた。
「立川」
「は、はいっ」
神木部長が、思考の読めない西内さんの言動に呆れていた私の名前を呼んだ。足元を映していた視界を上げると、そこには何やら言いたいことがありそうな部長がいた。
黙って神木部長が発する言葉の続きを待っていると、部長の唇がゆっくり離れた。

