「……そう」

 部長に思いを伝えた日から数日が経った。休日、巷で話題のカフェに香織さんと一緒にやって来ると、私はあの日の出来事を詳細に話した。

 香織さんは伏し目がちにそう発すると、何か言葉を探しているようだった。

 私も、私が香織さんの立場なら同じようなリアクションをとっただろうな、なんて呑気に思いながら目の前にあるケーキを一口分、口に運んだ。


 口内に含まれた瞬間、チーズの控えめな甘さが広がるチーズケーキ。それを味わいながら、私はあの日の出来事を思い出した。


 * * *


「ああ、分かった」

 私が〝冗談なんかじゃなくて本当に、本当に、神木部長のことを好きだったんです〟と想いを伝えた後、しばらくの沈黙が流れた。

 その沈黙を先に破らなければと思っていると、神木部長はそう言って複雑そうな顔をした。

「だけど、立川。俺は、その立川の気持ちに答えられそうにない」

 小さく、だけどはっきりと困ったような顔をしながら答えた神木部長。

 私は、これ以上部長を困らせるわけにはいかまいと笑顔を作り上げると「大丈夫です!分かってましたから」と答えた。それだけで、もう精一杯だった。