「おや、立川ちゃん。今日は元気が無さそうだねえ」
コピー機の前でぼうっとしていた私の元へやって来たのは田口さん。田口さんは、いつものように笑いながらそう言うと「どうしたんだい?」と問いかけて来た。
「神木部長のことで、ちょっと」
曖昧に濁して笑うと、田口さんは然程驚かなかった。だいたい予測は出来ていたよ、と言わんばかりの表情で、田口さんは引き続き口を開く。
「まあ、元気を出しなさい。立川ちゃんの元気が無いと皆も気分が上がらないからねえ」
とんとん、と私の肩で手のひらをバウンドさせる。その後、その手を宙に浮かせてひらひらと振りながら、田口さんは事務所を出て行った。
私は、コピーし終えた書類を抱えると、一度大きく深呼吸をしてデスクに戻った。
「よし」
声に出して、気合いを入れる。そして私は、またいつものように仕事を再開した。
余計なことを考えないようにと仕事に打ち込むこと数時間。私は、コピーした書類を他の部署に運ぶために部屋を出ると、廊下を歩き始めた。
書類を抱えて細い廊下を歩く。自動販売機の置かれた休憩スペースを通り過ぎようとすると、すっと頭にある人の声が入ってきた。

