「まさかそんなこと言ってくださってたとは思ってなかったです。嬉しい」
嬉しくて、口角が上がってしまう。私は、何とかして口角を下げようと試みていた。しかし。
「立川は頑張り屋だもんな。時々、頑張りすぎじゃないかと思うくらい。まあ、無理しすぎないように頑張りなさい。何かあれば言ってくれたらいいし、相談して」
部長の一言に、私の口角はついに下がらなくなってしまった。それどころか、また更に上がっていく口角。私は、それを隠すために両手で慌てて口を覆った。
「あ、定時過ぎてるのに引き止めちゃったな。悪い」
「いいえ、大丈夫です!部長なら、何時間引き止められてもいいです!」
嬉しすぎて、ついまたこうやって口走ってしまう。私が、たった今自分の口で放った言葉を反省していると、部長はくすりと笑った。
「またそんなことばっかり言ってないで、早く帰りなさい」
やっぱり、私の言葉を全て冗談として受け止めているような部長の言葉。いつまでも私の気持ちを受け止めようとしてくれない彼の言葉に落ち込みつつも、それ以上に、他の部長からの言葉が嬉しくて私は口角を上げたままで頷いた。
「分かりました。今日のところは大人しく帰ることにします。お疲れ様でした」
恐らくにやにやしているであろう私に、部長は笑って「お疲れ」と返した。
私は、部長に向けた右手をひらひらと振ると、倉庫を後にした。

