「部長、今、何て言いましたか?」
聞き間違いではありませんように、と願いながら部長の次の言葉を待つ。
「その髪型似合ってるって言った」
優しく笑いながら発された言葉に、私の胸は激しく脈を打った。
想像していなかった言葉にどうリアクションしていいのかが分からず、私は火照ってくる顔を俯けると小さく「ありがとうございます」と返す。
「どういたしまして」
私の返事は聞こえていたらしく、部長の声が優しいトーンで返ってきた。
火照った顔に手のひらを当て、次に手で風を仰ぎ、熱を冷ます。そんな動作を繰り返した後、私は後ろを振り返り、ついさっき持ち上げようと試みていた段ボールと向かい合った。
「あ、それ、俺が持って行くから」
「え、でも」
「でも、じゃない」
再び振り返ると、そこには笑いながら何かを探している様子の部長がいた。くいっと口角が上がった横顔。それを見るだけで私の胸はいっぱいだ。
「ちょっと用事済ませてから持っていくから。定時も過ぎたし、仕事切り上げたなら暗くなる前に帰りなさい」
「はい。分かりました。部長は、何か探してるんですか?」
まだ、ここにいたい。部長と一緒にいたい。そう思ってしまった私は、言われた通りすぐに帰ることはせず、探し物をしているのかを部長に問いかけた。

