その後、私は香織さんに「今の調子でアタックしてれば何とかなるわよ」「頑張りなさい」と少し他人事のようにも聞こえる言葉に無理矢理慰められ、何とか立ち直ることができた。

 この先、部長が私に振り向いてくれる可能性なんて限りなく低い気がするけれど、それでも、今は好きなのだから仕方がない。

 諦められないのなら、諦めがつくまで好きでいてやろう。私は、そう一人決意した。


 すると、早くもその決意が報われたのか、私が退勤時刻を過ぎた後で倉庫に備品を取りに行くと、そこで部長とばったり鉢合わせた。

「お疲れ」

「お疲れさまです」

 今朝の事もあってか、挨拶を躊躇ってしまった私よりも先に挨拶をしてくれた部長。私は、普段と変わらず接してくれる部長に、正直嬉しさとつまらないという気持ちが半分半分で複雑だった。

 部長に話しかけたいけれど、話しかけられず、そのまま私はA3サイズのコピー用紙が入った段ボールが積まれた場所に立った。そして、それを一つ持ち上げようとした、その時。


「髪、似合ってると思うよ」


 私の背後から、部長の声がした。私は、段ボールにかけた手を離し、慌てて後ろを振り向いた。

「えっ」

 狭い倉庫の中。ここにいるのは私と部長の二人。紛れもなく部長の発した言葉に、私の頭は混乱してしまった。